『嵐の中で』(2018)既視感ある設定だけど調理がうまい!【Netflixオリジナル】

Netflix
!ネタバレ有りの感想です!

75点

かの有名作、『オーロラの彼方へ』のオマージュとしか思えない『嵐の中で』。
スペイン産『オーロラの彼方へ』といってしまえばだいたい説明しきっている感がある。
序盤では、こんなまんま『オーロラの彼方へ』でどうするんだ?!と思ったが、うまい具合に調理していてとてもよかった。

『嵐の中で』(2018)


出演:アドリアーナ・ウガルテ、 チノ・ダリン、 ハビエル・グティエレス
Netflix作品ページ

あらすじ

時空のズレにより25年前の少年を救った後、別の人生で目を覚ましたベラは、大切な娘がこの世に存在していないことを知り、自分の人生を取り戻す手がかりを探す。
Netflixより

『オーロラの彼方へ』と類似する基本骨格

『オーロラの彼方へ』は、30年の時を越えて

  • 同じようなオーロラ現象が30年前と現在で発生し
  • ラジオを通じて現在では死んでいる父(過去)と息子(現在)がつながり
  • 繋がって情報を与えることによって過去を改変してしまい、バタフライエフェクト的に現在が変わってしまう。
  • 過去では「連続殺人事件」が発生しており、これが物語に大きく絡んでくる。

これが『嵐の中で』では、25年の時を越えて

  • 同じような嵐が発生し
  • ビデオカメラとテレビを通じて、とある一軒の家に住んでいた過去の住人である少年ニコ(過去)と現在の居住者である主人公ヴェラ(現在)がつながり
  • 繋がって情報を与えることによって過去を改変してしまい、バタフライエフェクト的に現在が変わってしまう
  • 過去に「殺人事件」があって、これが物語に大きく絡んでくる。

配役や細かい設定を変えただけで、大きな基本設定がここまで似ている。
ちなみにタイトルも「異常気象+位置」だしね。
「猛暑の端っこで」とかいう日本版とか誰か作ってくれないかな。

きちんとオリジナリティを持って調理した

ここまで似ているので、ちゃんと面白くなるのか…?と不安だったが、面白かった。
なんなら『嵐の中で』の方が好きである。

『嵐の中で』では、過去を変えたことによって、愛する娘の存在が消えてしまう。
『オーロラの彼方へ』でも母が消えてしまい、過去改変を重ねたが、本作も愛する夫と娘、変わってしまう生活を取り戻すために主人公が奔走する。

『オーロラの彼方へ』と違うところは、ありえたかもしれない現在(改変後の生活)も大切に扱ったことだ。
『オーロラの彼方へ』は主人公の主観のみを大切にし、苦労の果てに父ちゃんが生き返ったぜ!やった!だけなんだけど、本作は改変後の世界(救った少年ニコと主人公ヴェラが恋仲になり、娘は存在しないものの幸せに生きていた世界)もオリジナル世界と同等の価値あるものとして訴える。

娘がいないことを除けば、元の世界よりも幸せそうに見える改変後の世界。
その自分を捨ててでも娘に会いたいという思いを貫く主人公ヴェラの母としての姿がよかった。

ヴェラが自殺することによってニコが再びビデオカメラとテレビを使って過去の自分とつながり、世界を再改変する。
きっと少年時代のニコにとっての将来、ヴェラに会わないように忠告したのだろう。
こうしてニコとヴェラが出会わないことによって、ヴェラの娘は生まれ、オリジナル世界に近い世界へと改変される。

第一改変の時に、駅でずっとヴェラを待つニコのシーンがすごくいい。
わりとこの手の時間SFでありがちな表現ではあるけれど、時間が過ぎるのを過去側が待って未来に追いつくってイイよねぇ。

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