『YOU 君がすべて シーズン1』(2018)愛しささえ芽生えるサイコパスストーカー【Netflixオリジナル】

!ネタバレ有りの感想です!

85点

主人公・ジョーを演じるペン・バッジリー。彼は私の中でダン・ハンフリーで在り続けているんだけど…(ドラマ『ゴシップガール』の主人公)
ダン・ハンフリーも思えば少しストーカー気質な少年だったけど…あんなんかわいいもん…と震えるくらいのサイコパスストーカー!!

サイコパスものって猟奇的だったり、悪魔像を人間したものが多いけど、これは純粋なサイコパス。
純粋な、という表現もおかしい気もするが、主人公・ジョーには基本的に人間味を欠いた悪意がない。

人が苦しむところが好きとか、グロテスクなものに惹かれるだとかの猟奇的側面はゼロ。
普通の青年たちと同じように、運命の恋に憧れ、好きな人を愛し、愛されたいと思っている。
そのための手段や方法がちょっと…いや、かなり常軌を逸しているだけ。

『YOU 君がすべて』(2018)


出演: ペン・バッジリー、 エリザベス・ライル、 シェイ・ミッチェル
原作・制作:グレッグ・バーランティ、 セラ・ギャンブル

Netflix作品ページ

あらすじ

作家志望の女性に恋をした本屋の店長の想いが執着に変わる時、彼女の人生に入り込むため、男はその魅力的な笑顔からは想像もできない過激な行動を取り始める
Netflixより

愛しささえ芽生えるサイコパスストーカー

序盤のターゲットに決めた相手・作家志望のベックを落とすために手段を厭わない姿…。
スマホを盗むとか、部屋に入り込むとか、挙げ句にはベックといい感じの男を監禁してしまうとか…。異常な執着の仕方とアプローチ方法にドン引きしていたはずなのに、物語が進むにつれて二人の恋と、サイコパスストーカーなジョーを応援したい気持ちになってしまっている。

ジョーに対してそんな感情が芽生えてしまうのは、彼に悪意がないからかもしれない。
最初の殺人・ベックといい感じの男を殺したときも。ベックの親友ピーチを殺したときも。
彼は二人を憎んで憎んで、苦しめたくて殺したわけではない。ベックと仲良くなるために、ベックといい関係を続けていくための障害だったから殺しただけである。
もちろん、殺人を実行してしまうというのは異常なことだし、ジョーのその異常な行動力こそサイコパスの賜物だとは思うが。その思考自体は普遍性の高いものじゃないだろうか。
こいつがいなければ…彼女の行動が手に取るようにわかれば、彼女と僕は幸せでいられる。そんな思い自体は異常ではなく、みんなどこかで思ったことがある感情ではないだろうか、。
それゆえに、ジョーには親近感を覚えてしまうのかもしれない。

正義VS正義

「正義の反対はまた別の正義」だなんて言葉があるが、まさにその通りだな、と実感する。
各々の信念、正義のぶつかり合いが…なんてキレイな意味ではなく、人間とはなんと都合がいいものか、という意味である。
自分(私)に親しい人(仲間や肩入れした人)こそ正義なのである。
殺人という行為自体は紛れもない悪であり、どんな理由にしろ悪であることは変わりがない。
しかし、どちら側に肩入れするかによってどちらも正義になりえるのだ。
例えばピーチの家族からすればピーチを殺したジョーは悪人であろう。ピーチに肩入れして彼女を好ましく思って見ていた視聴者がいたとすれば、その人にとってもジョーは悪であり、ジョーを粛清する人物が現れればそれは正義である。
だが、ジョーに肩入れし、ピーチの行動に不信感を持って見ていた視聴者からすればジョーの行動は正義にもなり得る。

アメリカドラマらしいローリングストーンなドラマ。転がり始めた石は止まらず思いもよらない方向へ転がったり、ぶつかったりする。
そんな展開の早さと飽きさせない良作ドラマだった。
ラストでジョーの元恋人、キャンディスが帰ってくるシーンで終わっている。そして続編、シーズン2の制作も決定しているようだ。楽しみ!

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