『リメンバー・ミー』(2010)ロバート・パティンソンが出てる方の映画感想

DVD
!ネタバレ有りの感想です!

なんてことをしてくれたんだ……そんな気分になる映画。絶対に前情報無しで見るべきやつ。久々に映画で思い切りぶん殴られた。

『リメンバー・ミー』(2010)


出演: ロバート・パティンソン, エミリー・デ・レイビン, クリス・クーパー
原作:アレン・コールター

あらすじ

ニューヨークの安アパートに暮らすタイラーの心は苦悩と怒りで満ちていた。6年前、兄の死が全てを変えた。弁護士の父との溝は埋まらない。母が再婚し、父の愛を見失った11歳の妹を救ってやることもできない。孤独と虚無の日々・・・タイラーは人生の迷子だった。しかし、ある日出会ったアリーの揺るぎなさが彼を開いていく。初めて感じる本気の愛、生きる悦び。やがて、彼女自身が同じ傷を抱えていると知ったとき、バラバラだった家族の再生がゆるやかに訪れる・・・。映画公式サイト

感想

『TENET』でニールことロバート・パティンソン氏に惚れて、彼が出演している映画を見たくなった。
『グッドタイム』は『TENET』以前に見たし、『悪魔はいつもそこに』も視聴済みだ。そして見つけた『リメンバー・ミー』。『TENET』を除く三作の中では一番ニールに近い役柄かな。

プロットツイスト(どんでん返し)部分に賛否両論…というか、批判がめちゃくちゃ多かったらしい。そりゃそうだ。
いやあ…世界は残酷だな…それでも希望を持って前を向いて生きなきゃみたいな教訓が出てくるんだけど絶望しかねえよ。ひどい…ひどい…その仕打ちはねぇ…と打ちひしがれた。

家族の再生とラブロマンスが静かなテンションで描かれていく本作。兄を失った悲しみと、そのせいでギクシャクした家族とそれを取り巻く人々の狭間で少しずつ傷を修復し、家族の絆も、大事な人への愛も獲得しつつある主人公(ロバートパティンソン)がラスボスでもある父との和解を達成した日!!

主人公が父のオフィスへ行くんです。エレベーターの数字が99階、100階、と相当な高層ビルに父が勤めていることが発覚し、随分といいとこに勤めてるんだなぁとその数字が印象的に残る。
父は娘(主人公の妹)を迎えに行くために車に乗り、それを主人公は父のオフィスで待つ。ふと目に留まったのは父が使っているパソコンのスクリーンセイバー。家族の写真が流れ、家庭を顧みないと思っていた父がずっとちゃんと家族を想っていたことを知り、これから本当にこの一家はみな手を取り合って前に進んでいける…良かったな、と思った次の瞬間。映像は妹の視点に変わり、学校の黒板に日付が書かれる。

『2001.9.11』

そんな。まさか…うそでしょ…とその日付に愕然とする。
主人公にシーンが切り替わり、父を待つ主人公が窓辺に立つ。徐々に引いていくカメラワークで明らかになるのは、主人公が居る父のオフィスは超高層のツインタワーであること。

この映画で私は9.11を体験したのだ…。これまで世界史に乗る悲惨な事件として認識していた『アメリカ同時多発テロ』を、初めて〝体験〟した。実際の9.11の被害者に知り合いはいない。名前を知っている人も、顔を知っている人もいない。驚愕の事件であり、悲しい出来事だったことは事実だが、日本に居る私はリアルタイムでその事件を知っていてもこれまで体験したわけではなかったのだ。
何も知らないまま主人公とその家族と周りの人の日常を追い、彼らに対してうっすらと好意を抱き、傷の修復を家族の再構築を良かった…と思ったところでそれが突然壊される。
この映画は9.11を追体験させる映画だ。あのテロで知人を、友人を、家族を突然奪われた人たちはこれ以上の驚きと絶望を味わったのだ…。アメリカの人々があの日に感じたものを、数パーセントかもしれないけれど初めて理解した。

そりゃ批判も集まるよな…と思う。実際に体験した人々にとってはあの悲しみを、苦しみを、再び味わわされたんだもんな…。
癒えかけていた傷を予測しなかったところで突然掘り返される。その手法はテロと全く同じだ。
視聴前にアナウンスすることでそれは防げるが、アナウンスしてしまうとこの衝撃を与えることができない。なんともアンビバレントな状態だ。
すごいけれど評価することも難しい。人に薦めることも難しい。なかなか出会えることの少ないタイプの映画に出会ってしまった…。

タイトルとURLをコピーしました