『The Circle』(2020)顔が見えない男女8人のリアリティショー【Netflixオリジナル】

Netflix
!ネタバレ有りの感想です!

同名の映画があるけれど、今回の感想は映画ではなく、Netflixオリジナルのリアリティーショーの方。
リアリティーショーには馴染みがなく、今まであまり見たことがなかったんだけど、SNSで騙し合い!というのが面白そう…と思って見てみた。

めちゃくちゃ面白かった!!

『The Circle』(2020)

Netflix作品ページ

あらすじ

直接会うことなく、口説きモードや友達としてのアプローチを交えながら、他の参加者に好かれるよう戦略を練る社会実験的ゲーム。目指すは賞金10万ドル!Netflix

サークルとは?

顔が見えない男女8人が「Circle」というSNS上でやり取りし(わかるのは写真とチャット・文字情報からの人となり)、1人の優勝者が賞金10万ドル(日本円にして1000万くらい)を手にできる、というゲーム。
基本チャットでのやりとりなのでもちろん、”なりすます”ことも可能だ。

何がおもしろいのかというと……

これは小さな社会集団である。
一昔前に世界がもし100人の村だったらなんて本が流行ったけれど、これは小さく小さく簡略化された世界の集団の縮図だ。
集団の中での人間関係、人の心理ってものがたくさん見れるのが面白い。

このゲームでは、人に好かれなくてはならない。トップになった”インフルエンサー”の称号を貰った人が、自分の驚異になりそうな人、ゲームに邪魔な人を”ブロック(=排除)”していけるからだ。
そのため、誰かに猛烈に嫌われてしまえば、その人が権力を持ったときに排除されてしまう可能性がある。勝つためには嫌われない(=”敵”と認定されない)ようにしなければならない。

“なりすまし”で女が男になりすますことはこのゲーム内ではなかった。
男が女のふりをしたり、自分の本来の見た目を隠し、イケメンや美女になることはあっても、女が男になることはなかった。
情報が少ない中、文字だけのやりとりの場合、男よりも女の方が好かれやすい、と全員が思っていることがわかる。
敵か味方か、という判断の前では女性の方が有利である、という思い込みがあるのだろう。
実際に最後まで残った5人は、女性2人(なりすまし含む)、男性3人だったので女性であることが絶対的に優位だったとは言えない。

また、一時的な恋愛感情は”仲間づくり”、協力関係を築くためには不適切なのかもしれない。今回の「Circle」のゲーム内においては少なくとも恋愛が有利に働くことはなかった。
戦略として口説きに来ているのだろう、と判断されたりしていた。
最後に残った5人が互いに恋愛感情を抱かないだろう、互いに恋愛対象外の人物のグループだったことも興味深い。
最後に残ったのは、「ジョーイ」「シュバム」「クリス」「サミー」「レベッカ(なりすまし)」の5人だ。
それぞれ互いに口説くこともなく、最初から恋愛対象になることはありえないと思っていただろう。最後に5人が対面したときの雰囲気を見ていてもわかる。確かに友情が成立し、そこに恋愛が絡むことはなさそうだ。
愛憎入り交じる、フラれた相手をマイルドに言えば見返してやるとか、ハードに言えば復讐してやるだなんて感覚が普遍的にあるように、恋愛が絡むと何かあったときに壊れやすく、仲間作りには向いてないのだろう。

最後まで残った5人が一番最初からのメンバーというのもおもしろい。一度できてしまった仲間に新参者はどうしても遅れをとってしまうのだろう。
「Circle」内での時間が経つうちに、生身の顔が見えず声も聞けず、文字だけのやり取りであってもみんなメンバーに情が湧いてくる。その状態で誰かを排除しなくてはならなくなったとき、やはり付き合いの浅い新参者が消去法的にブロックされていくのだ。

最初は合理的に、ゲームに勝つという戦略を最優先事項として行動していた人も、時間が経つにつれて情に流されるようになっていく。借りがある人間を排除することに多大な心理抵抗を感じ、排除することを苦痛に感じる。ゲームで勝つという目的遂行のため、という思いよりも、この人を切り捨てることはできない、が優先されてしまうのだ。

最後に、優勝した「ジョーイ」についてもおもしろいな、と思う。このリアリティショーを最後まで見た人間は「ジョーイ」をいい人、だと思うだろう。
最初、自信たっぷりで自分が好きで偏見が強そうな「ジョーイ」をいけ好かねぇな、と思っていた私も彼の印象は最後には良くなっていた。人がいかにギャップに弱いか、ということである。
なりすまし、に対する彼の態度を見るとわかりやすいのだが、序盤でレズビアンの「メルセデス」のなりすましが発覚したとき、「ジョーイ」は怒っていた。騙された、と。彼女が見た目で差別されてきたこと、それを訴えたかったこと、そんな意図を聞かずにただただ騙されたことにだけ注視していた。
それが後半、「ショーン」のなりすましがわかったときと、対面で「レベッカ」のなりすましを知ったときはどうだろう?怒ることなく優しい言葉をかけ、わかるよ、それでも絆は本物だ、と言ったのだ。このゲームを通じて彼の価値観が変化したのだろう。メンバーの中で一番、価値観が変わった人かもしれない。
一方、最後で2位につけた「シュバム」はどうだったろう?彼は最初から合理的で賢く、平等に人を見ようとしていた。一貫性があり、最初から優しくいいひと、だったのである。見方を変えれば、「ジョーイ」は「シュバム」の考え方に近づいた、ということだ。
しかし、順位を見てもわかるように、視聴者にも、「ジョーイ」がいいヤツ、いい兄貴という印象で残ったのではないだろうか?

というように、様々な人間心理を見ることができる。それも視聴者は神の視点で。

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