!ネタバレ有りです!
やったあ!ループものだ!
パーティからの帰り道、主人公とその親友たちは交通事故にあってしまう。そこで命を落とした主人公のサマンサは、目が覚めるとその日の朝に戻ってしまっていた。
時間SFが大好きです!きちっとその物語内のルールがはっきりしているところが好き。
サマンサが繰り返す1日は、2月12日のキューピットデーで、日本で言うバレンタインのようなもの。意中の相手にバラを贈る日。
サマンサが目覚めた2度目のキューピットデーの朝で、ループものだ!!とわかりテンションがあがった。
この映画のメッセージは、自分が善いと思う正しい行動で、今日というかけがえのない1日を大切に生きようというありきたりなもの。
毎日同じ日を繰り返し、流されるように過ごしている人が多いだろうけど、その1日は最後の1日かもしれないし、限られた時間の中の貴重な1日なんだよ。っていうやつ。ありきたりなメッセージについての是非は置いといて、時間SFとしての観点で感想を残しておきたい。
『ビフォア・アイ・フォール』
原題:Before I Fall (2017)
制作国:アメリカ
監督:ライ・ルッソ=ヤング
脚本:マリア・マジェンティ
キャスト:ゾーイ・ドゥイッチ/ハルストン・セイジ/ローガン・ミラー/キアン・ローリー
あらすじ
17歳の高校生、サマンサは交通事故に遭って命を落とした。しかし、どういうわけだか死ぬことが出来ないのである。死を迎える度に、彼女はその日の朝にタイムスリップしてしまうのである。この謎を解き明かしていく過程で、サマンサは自分の人生と死の意味について考察していくことになる。Wikipedia
ループ
・2月13日深夜(00時39分)に誰かが死ぬ。→ループの始点:2月12日の朝に戻る
一周目と二周目は主人公+親友の4人。三周目では死を回避したつもりがサイコ女と呼んでいじめていたクラスメイト(ジュリエット)が自殺を図る。いじめていたことに自殺をもって初めて罪悪感を持ち、失意のままに眠るとまた次の周回に入っていて、同じキューピットデーの朝を迎える。→自分の死の回避ではループは脱することはできない。
・各周回は独立していて何も引き継がれない。主人公の記憶のみ引き継がれている。
ループもので前周回の出来事を引き継ぐ(周囲の人物に影響が現れる)タイプもあるが、この映画では何も引き継がれない。
時間SFと教師と黒板
時間SFで、登場人物が学生の場合、お約束とも言えるほどよく見るのが、時間に対するその物語での解釈を教師が黒板を使って説明するというもの。『サマータイムマシンブルース』や、最近見た映画だと『江の島プリズム』、『orange』でも教師が黒板を使ってタイムパラドクスや並行世界について説明していた。今作も、キューピットデーのバラが配られる授業中に、先生が執拗に口にしていた『シジフォス』という言葉。これがこの物語の構造を語っていた。
神話や宗教について明るくないので引用で。
まず、『シジフォス』とは
シーシュポス(長母音表記を略してシシュポス、シジフォス、シシュフォスとも省略される)
ギリシア神話に登場する人物であり、徒労を意味する「シーシュポスの岩」で知られる。Wikipedia
シーシュポスの岩
シーシュポスは神々を二度までも欺いた罰を受けることになった。彼はタルタロスで巨大な岩を山頂まで上げるよう命じられた(この岩はゼウスが姿を変えたときのものと同じ大きさといわれる)。シーシュポスがあと少しで山頂に届くというところまで岩を押し上げると、岩はその重みで底まで転がり落ちてしまい、この苦行が永遠に繰り返される。Wikipedia
まさにこの映画のストーリーである。日本でいえば、賽の河原の石積みが同様の話だ。
まとめ
周回を重ねるうちに主人公サマンサは反抗的になってみたり、やる気をなくして無為に過ごしてみたり…。と変化していく。
最終的には妹に冷たく当たることもやめ、両親に感謝し、親友たちのために自分なりにできることをし、とってもいい子になる。最後の周回では朝起きたときから、何かを決意したような(おそらくサイコ女を救って自分ひとりが死ぬことでこのループを終えるという覚悟)顔で過ごす。
パーティから飛び出すサイコ女(ジュリエット)を助け、サマンサが身代わりとなってトラックにひき殺されるエンドなんだが、
・サイコ女を救って、友人たちを救って、自分だけが死ぬことでループを脱した
ともとれるし、
・シジフォスの岩の話なのだとしたら、善いことをして誰かを救ったところでまた朝へとループする。
ともとれる。
私的解釈は、これは煉獄ってやつなのでは?と思った。
煉獄についてもあまり深い知識はないが、
煉獄
カトリック教会の教義で、この世のいのちの終わりと天国との間に多くの人が経ると教えられる清めの期間。
天国には行けなかったが地獄にも墜ちなかった人の行く中間的なところであり、苦罰によって罪を清められた後、天国に入るとされる。Wikipedia
つまり、このループはサマンサの罪を清めるための死後の世界の話。
現実世界で起こったことは一周目だけであり、最初のトラック事故でサマンサは死んでいたのだ。
二週目以降は煉獄の世界であり、家族にやさしくし、親友たちに感謝の言葉と手を伸ばし、サイコ女を救うことでサマンサの魂は清められ、ループを脱して、成仏(キリスト教的にこういうのかは知らないけども)したのではないだろうか。
『トライアングル』っていう映画が同じようなテーマの話だったけど、『ビフォア・アイ・フォール』は女子高生の学園ものとして、『トライアングル』はかなりホラーの味付けがしてあるので印象は全然違う。
にしても、アメリカの高校生って軽率にパーティしすぎじゃない…???