『アナイアレイション -全滅領域-』(2018)残酷で美しいSFホラー

Netflix
!ネタバレ有りの感想です!

75点

ホラーは苦手でどうもダメなやつも多いんだけど、このホラーはいい。よかったぞ。
SF的な色が強めなとこも私に響いた要因かもしれない。

びっくりしたり、背筋がゾゾゾってタイプのホラーではなく、じんわりと染みるような、そして美しさを伴ったアートのようなホラーだ。

『アナイアレイション -全滅領域-』(2018)


出演: ナタリー・ポートマン、 ジェニファー・ジェイソン・リー、 ジーナ・ロドリゲス
監督: アレックス・ガーランド
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あらすじ

秘密任務から生還した夫が危篤状態に。最愛の人を救うべく、生物学者のレナは政府が封鎖した地域へと足を踏み入れる。その異様な世界で、彼女は一体何を見たのか。Netflix

アナイアレイションの世界の美しさ

アナイアレイションが描く世界、「シマー」という謎多き領域の中の世界は残酷で美しい。

人の形に枝を張り巡らせて花を咲かせる植物。シャボン玉のような色を放つ気体。

グロテスクに変異を遂げた生き物や植物が跋扈する領域は美しいながらも恐怖を覚える。

この描き方が素晴らしい。元の生物や植物は、馴染みのあるものであり、私達が知っている世界のものである。それら既知のものが、絶妙に変異し、未知のものとなった姿が恐怖を増幅させる。この変異の具合が絶妙で、デザインした人の才能にひれ伏すしかないぜ。

まさにアート作品を見ているような、美しいと感じると同時に不気味さも感じる。

 

中でも好きなのは熊が変異したであろうバケモノ。この熊もどきの生物は、目が退化しほぼ盲目らしく音に反応する。

 

息を潜めてやり過ごそうする一同のうち、一人が熊に食われてしまうのだが、その食われた仲間の悲鳴が熊もどきの咆哮として使われるシーンはぞくぞくとした興奮を覚えた。

食べることでその人の叫び声をカービィのようにコピーした熊の咆哮。何の意味を持たないはずのただの熊の咆哮に、食われてしまった仲間の『助けて』という叫び声、断末魔が使用される。壊れたテープのように変調しながら響くその叫び声は、変異してしまった熊もどき自身の心の叫びのようにも聞こえてしまうし、もうすでに助けられない仲間が叫び続けているような錯覚を起こす…計算され尽くした美しくて残酷なシーンだ。エモい。めっっちゃ好きです。

ストーリー展開

結局、領域とはなんだったのか、は明確に解明されない。回収されない伏線もある。

どうやら原作三部作のうちの一作のため、映画オリジナル要素も強いらしい。

なので、結局あの領域はなんだったの?このあとこの世界はどうなるの?的なところは投げてしまっている。

ラストシーンの主人公が恐らく人間ではなくなっている…的なオチもSFやホラーにありがちなものでまあ悪くないんじゃない?という印象。

最後のミラーマンとの闘いはあんまりおもしろくなかったかな…。そこまでの綺麗な領域の映像に惹かれていただけにあのシーンがめっちゃ長くて飽きる。

ストーリー展開としてはちょっと普通かなって感じだけど、美しい『シマー』の中は見る価値あり!

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